地域エネルギー管理システム(Community Energy Management System; CEMS) は,地域単位でエネルギーの利用効率を向上することを目的とするシステムである.筆者らは,横浜スマートシティプロジェクト(YSCP) 向けにCEMS を開発した.本CEMS は,複数のシステムとインターネットを介してWeb サービスで連携し,ビルやハウスなどの施設のエネルギー消費量を調節する.2012 年10 月の運用開始から約1年で,CEMS が管理する施設数は約2,000 となった.本論文では,CEMS の通信ソフトウェアの開発と運用を通して得られた知見を述べる.

1.はじめに

 建物内に存在する空調や照明などの機器をIT技術を用いて監視制御することで,住人の利便性と省エネをバランス良く実現するシステムとしてBuilding Energy Management System (BEMS)やHome Energy Management System (HEMS)がある.これらのEMSは,気候や住人の行動を考慮して機器を制御したり,電力消費量を見える化したりする.BEMSは大型ビルを中心に普及しており,HEMSは一般家庭に普及しはじめている.

 地域エネルギー管理システム(Community Energy Management Sysetm; CEMS)は,建物ではなく地域を対象とするEMSである.CEMSの管理対象は,ビルやハウス,電気自動車(Electric Vehicle; EV),太陽光発電(PhotoVoltaic power generation; PV),蓄電池などの多種多様な施設である.また,Demand Response (DR) [5]と称される需給調整機能を備える点が特徴である.

 近年,CEMSによるCO2削減効果を検証するために,各地で実証実験が行われている[12].筆者らは,横浜スマートシティプロジェクト(YSCP) [13]向けのCEMS開発[7]に参画し,通信ソフトウェア(通信ソフト)を開発した.YSCPは,最大で大型ビル20棟,ハウス4000軒,EV2000台などを実証対象としており,国内の実証実験では最大級である.運用開始から約1年で,CEMSが管理する施設数は約2,000となった.CEMSの通信ソフトはWebサービスを利用し,インターネットを介して,施設の電力情報を収集し,施設にDR情報を発行する.

 本論文では,CEMSの通信ソフトの開発と運用について,実証実験を通して得られた知見をまとめる.特に,大規模かつ多種多様な相手と通信することに起因する課題と対策について述べる.以降,CEMSと称する場合は,筆者らがYSCP向けに開発したCEMSのことを指す.