ICTシステムのライフサイクルでは一般に、運用・保守は企画・開発よりも期間が長く、コストも多い。にもかかわらず、開発段階で運用が軽視され考慮不足が目立つシステムも多い。ICTシステムの果たす役割の大きさを考え、中長期的な視野に立って開発時から運用を考慮して設計するアーキテクトを目指してほしい。以下ではシステムの運用と保守に分けて、開発時に考慮すべきポイントを解説する。

運用は利用範囲に着目

 「運用しやすいかどうか」は新規開発時に作りこまなくてはいけない。システム基盤やアプリケーションを適切に監視・運行する運用機能は、アプリケーションの見た目や使い勝手とは違い、本番稼働後に手を入れることが難しいからだ。

 日常運用のしやすさはもちろん、異常時における切り分けやすさを考慮したい。そのためにはシステムの利用範囲に応じたシステム運用を設計すること、言い換えれば掛けられるコストに見合った運用設計が欠かせない。

 例えば、特定部門の数人だけが使う内部業務システムはシステムの利用者自身に異常の検知を任せてしまうことも多い。運用者は利用者から連絡を受けて対処する。利用範囲がもう一段階上がると、システムの死活監視を加えることで、障害対応をスピードアップする。利用者が複数部門に跨る場合でも、製造ラインや物流手配、金融取引に直結しない内部業務システムは死活監視の追加レベルで十分な場合が多い。

 重要システムになると運用もシビアになる。監視対象のプロセスを洗い出したり、性能に関するしきい値を検討し、それぞれをしっかり監視できる仕組みを構築する。当然、運用しやすさや障害切り分けのためのさらなる仕組みが必要で、新規開発時に充分考慮して作り込まなければいけない。