ICTシステムの開発時に「24365(ニーヨンサンロクゴ)」と気軽に要望されることがある。言うまでもなく24365とは、システムを24時間365日、絶え間なく「無停止」で稼働させ続けるという意味である。この要望が来たらアーキテクトは要注意だ。鵜呑みにすると必要以上のコストと運用負荷をかけてしまうことになりかねない。

業務的な可用性を見極める

 24365を要望した発注者によくよく聞いてみると、「夜間や休日に保守時間を取れるのだが、営業時間外や休日にもできればシステム使える時間を増やしてほしい」という意図だったり、「海外拠点でも使うので1分でもシステム全体を止めるのは難しい」だったりする。無停止といっても様々な意図があり、その意図を満たすための可用性(Availability)もまちまちだ。アーキテクトは業務要件から導き出した無停止と可用性を分けて検討し、各々あるいは両方の要件を充足する方式を設計すべきだ。

 本当の無停止のシステムもある。例えばATMネットワークと連携する、ある銀行システムでは、実にシステムを6重化している。現用機と待機機という通常のホットスタンバイ構成に、さらに予備機を加えた3台構成で稼働させ、この構成を東日本と西日本のデータセンターにそれぞれ置いている。ここまでして法定点検や災害対策を含む保守作業が発生しても無停止で稼働できる。

 また気象データを配信するシステムの例では、データ配信(ストリーム)はシステム2台のデュアル構成で処理する。処理結果を突合したり、「2台で並行する処理のうち先に完了した処理を採用して後で完了した処理を破棄する」という先着優先を判断したりして、本来の意味での無停止を目指している。