スーパーコンピュータ「京(けい)」はハードウエア性能中心の評価では世界1位の座を譲ったが、「Graph500」など実用的な計算モデルでの評価では世界1位を維持している。伝統的なノイマン型の延長線上にある京は、ソフトウエアから見た汎用性が高く、ロジックチューニングしやすい特徴があるからだ。

 京の大規模データ解析では、「動き続ける」という信頼性を日本品質のハードウエアが支えている。一方、大量のジョブを効率的にスケジュールしてシステム全体の稼働率を上げるという、利用者目線の目的達成には、ソフトウエアが寄与する部分が多い。

 ICTシステムの登場以前は、自宅と海外との無料テレビ会議や、キャッシュレスのリアルタイム金融取引といった「時間と距離の超越」は夢の中でしかかなえられなかった。それが今は実現のものとなり、IoT(Internet of Things)やブロックチェーン(ビットコインやFinTech)でさらに加速されつつある。

 ハードウエアの性能向上、インターネットなどのネットワーク化の普及、コンテンツやコミュニケーションなどのデジタル化の進展、そしてそれらのパワーを最大限に引き出すソフトウエアの開発力向上――。これらが相まって、夢を現実のものとした。

 SEの歴史は、夢をかたちにしてきた歴史でもある。最終回は「SEとは何か」「ITアーキテクトの夢は何か」について考えてみたい。

一言では語れないSE

 ICTシステムにはハードウエア機能とソフトウエア機能を組み合わせた最適なアーキテクチャが求められている。その実現には様々な技術とそれを担うエンジニアのチームワークが不可欠だ。担い手であるSE(Systems Engineer)は日本固有の用語だが、ICTに携わるエンジニア全体の総称と言える。

 ただ「SE」が指す範囲は広い。人材定義やスキル定義、作業内容の定義は実に様々だ。いくつか見てみよう。

 情報処理推進機構(IPA)の「ITスキル標準(ITSS:IT Skill Standard)」では、IT関連のスキルを11職種・35専門分野に分類している。ITSSはSEを定義していないが、SEのスキルに該当する職種は概ね、「コンサルタント」「ITアーキテクト」「プロジェクトマネジメント」「ITスペシャリスト」「アプリケーションスペシャリスト」「ソフトウェアデベロップメント」「ITサービスマネジメント」あたりである。