本連載では、ビジネス文章力を向上させたい方のために、筆者がこれまで実務の現場で部下や後輩に教えてきた、教わってきたケースを紹介しながら、さまざまな文章スキル不足を「病」にたとえ、それを治療する、治療を受けるというコンセプトで、スキルアップの具体的方法について解説します。

 今回は「若年部下指導放棄症」の治療です。仕事において先輩や上司・上長は部下を指導育成する必要があります。特に、まだ能力や経験がともなわない若い人には細やかな指導をすることが求められます。

 しかし、不完全な上司や先輩は若い部下を放置し、若手社員が正しく仕事を進めることができないと、ひたすら冷たく突き放すのです。このような状況では、部下も成長しないですし、組織力も高くなりません。

 今日の患者さんも「部下育成」に問題がある人でした。ビジネス文章ドクターになる前の私は、ビジネス文章女医の女井エリカ(めい えりか)先生の助手をしていた時期がありました。今回は、この頃の話になります。

萩野シロウさん(仮名 26歳 男性)の症状

女井:芦屋さん、次の患者さんはどういう方なの?

芦屋:はい、ちょっと部下指導に優れないようです。測ってもらったら、とても低い対人体温でした。ちょっと、他人低体温症気味ですね。

女井:そう。最近はそういう人が多いわね。昔は部下に熱い人が多くて、対人熱中症が多かったけど、今は違うから。

芦屋:そうですね。そういう時代ですね。

女井:では、呼んでちょうだい。

芦屋:次の方、荻野シロウさん、お入りください。今日はどうされましたか?

荻野:よろしくお願いします。ちょっと確認したいことがありまして。会社の部下が仕事をしないのです。指示しても全くやろうとしない。1週間でも、2週間でもそのままです。もう、やる気がないとしか考えられません。

芦屋:それは大変ですね。ところで、会社で荻野さんの上司や他の上長の方は何と言っていますか?

荻野:そこなんですよ、問題は。部下がダメなのに、上司や上長たちは私に問題があると主張するのです。本当に腹立たしい。

芦屋:なるほど。それで?

荻野:私が悪いという根拠は何か?論理的に説明してくれと要求すると、「部下の動きが悪いのは、指導する上司の責任である」と言うんです。非論理的な理由で私を誹謗するのです。これは、上司、上長にビジネス疾患があるのではないかと思い、今日は相談に来たというわけです。全くナンセンスです。