本連載では、ビジネス文章力を向上させたい方のために、筆者がこれまで実務の現場で部下や後輩に教えてきたケースを紹介しながら、さまざまな文章スキル不足を「病」にたとえ、それを治療するというコンセプトで、スキルアップの具体的方法について解説します。
第17回の治療は「目的手段捻転」の治療です。仕事では、正しい目的を設定すること、そして設定した目的を実現するための適切な手段を選択することが欠かせません。しかし、本来手段であることが目的に入れ替わってしまうことがあります。
今日の患者さんもそういう不幸を背負った状況でした。
芦屋:では次の方、徳田かおるさん、院長診察室へどうぞ。……徳田さん?
徳田:(しばらくしてから走って入ってくる)……先生、すみません、ちょっとヒアリングのやり方のセミナーに参加していまして。講師に粘って質問していたら、ここに来るのが遅れました。
芦屋:いやあ、大変ですね。ヒアリングというのはどういう仕事で?
徳田:はい、上司にヒアリングの仕事を指示されまして、もう、最高のヒアリングにしたいと思っています。ヒアリング手法やヒアリングに協力してもらう方法などを、完璧に調べているんですよ。
芦屋:それは、ちょっと違うような気もしますね。本当にヒアリング自体の調査を指示されたのでしょうか?もしかして、ある目的を達成するための手段としてのヒアリングなのではないですか?