ひどい状態だ。ユーザー企業が丸投げしていたシステムの保守運用業務からITベンダーが撤退する動きを捉えようと企画した、この特集「極言暴論スペシャル!」だが、アンケート調査から浮かび上がってきたのは、予想以上に進む保守運用の現場の劣化と、客先に塩漬けにされ将来が見えない技術者の姿だ。多くのユーザー企業で保守運用の現場は「限界集落」と化しており、まもなく大惨事となりそうだ。

 この特集ではITベンダーとユーザー企業の関係者を対象に実施したアンケート調査を基に、これまで4回に分けて、ITベンダーの撤退の動きや撤退理由、常駐技術者の境遇、ユーザー企業側の言い分などを紹介してきた。システム開発における多重下請けや炎上プロジェクトの問題がよく知られているのに対して、システム保守運用の問題は表沙汰になることが少なかったが、ITベンダーの“実力行使”により一気に明るみに出たと言える。

 アンケート調査から見えてきたシステム保守運用の現場の状況を改めて整理すると、次のようになる。どの企業でも保守運用業務が恐ろしく属人化しており、常駐するITベンダーの技術者以外は誰も手が出せない。当然IT部門は常駐技術者に頼りきりになる。にもかかわらず、ユーザー企業がITコスト削減のため、ITベンダーに毎年のように料金引き下げを要求。耐えかねたITベンダーが撤退の検討を始める。

 IT部門が常駐技術者に頼りきりなのに、ITベンダーが撤退を決断したらどうなるか。自分でまいた種とはいえ、ユーザー企業にとっては大惨事だ。システムを動かすことぐらいはできるだろうが、業務アプリの改変は一切不可能。システム障害が発生したらお手上げだ。だからIT部門は「泣き落としや脅しを繰り返し」て翻意させようとするが、ITベンダーが一度決断してしまうと、撤退を止めることはできない。

 ただ、ITベンダーの撤退という大事件が起こらなくても、保守運用業務を常駐技術者に属人化させているユーザー企業には危機が迫っている。常駐技術者の定年や転職だ。ITベンダーは代わりを務める技術者を育成していないから、常駐技術者の離職をもって保守運用業務はジ・エンドとなる。つまり、今担当している技術者以外には、システムの面倒を見られる人がこの世に誰一人存在しないわけだ。