「保守運用の料金を買い叩くだけでなく、約束を守らない。とにかく自分たちの都合をITベンダーに押し付けてくる。部門責任者に力量が無いのか社内調整の努力をしようともしない。撤退したのは、そんなタチの悪い顧客。撤退の話をしたら、顧客は泣き落としや脅しを繰り返したが、契約に沿って撤退した」。

 「複数回にわたる料金値下げ要請に応じても、顧客から更なるコスト削減を求められた。これ以上の対応は双方にとって好ましくないと考え、保守運用業務からの撤退を決断した。担当する技術者にかかるコスト(労務費など)は、製造業での原料コストと同じで容易に減らせる性質のものではない。それでも『減らせ』というなら、顧客自身で何とかすればよい」。

 理不尽な要求を繰り返すユーザー企業を見限り、システムの保守運用業務から手を引いたITベンダーの関係者のコメントは辛らつだった。この「極言暴論スペシャル!」では、ITproの読者であるユーザー企業関係者とITベンダー関係者に聞いたアンケート調査を基に、ITベンダーが保守運用から撤退する動きについて、その広がりや背景を分析する。今回は、具体的な撤退事例や意見を寄せたITベンダー関係者の声を中心に紹介する。

 今回のアンケート調査で回答を寄せたITベンダー関係者は220人。そのうち「実際に撤退した案件がある」と答えた人は70人、「撤退を通告する予定の案件がある」も16人いた。その数の多さには驚かされたが、それにも増してITベンダー関係者からのコメントの多さ、内容の深刻さは予想以上だった。「撤退するような案件は無い」とする回答者からも「客の理不尽さ」の具体例が寄せられている。

図●「実際に撤退したか、徹底する予定がある」との回答は約4割
図●「実際に撤退したか、徹底する予定がある」との回答は約4割
ITベンダー関係者に「あなたが所属するITベンダーでは最近、ユーザー企業の情報システムの保守運用業務から撤退したことがありますか」と聞いた
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 記事の冒頭で紹介した2つのコメントは、実際に保守運用業務から撤退したITベンダーの関係者からのものだ。撤退予定も含め撤退を決断したITベンダーが一番問題視するのは、やはり繰り返される料金値下げの強要だ。撤退予定というITベンダー関係者からも「働き方改革を進める大企業のシステム子会社から単価切り下げを強要された。当社の残業が増えているため撤退も含め検討すると伝えた」とのコメントがあった。