「なぜ、日本にはこんなに多くのITベンダーが存在するのか」。米国のITベンダーの経営者が、必ず一度は日本法人に対して投げかける質問だ。しかも、彼らが「多い」と思っているITベンダーは、実は氷山の一角。自社製品・サービスを売ってもらうSIerしか、その視野に入っていない。当然、多重下請け構造の中にいる多数の受託ソフトウエア開発会社は想定外だ。

 では、いったい日本にITベンダーは何社あるのか。ITベンダーの定義は難しいが、SI事業に携わる企業や、その傘下で開発業務を担う企業は、零細企業も含めるとざっと1万5000社に達する。これだけの数のITベンダーが、多重下請け構造のピラミッドを構成しているのだ。6次請け、7次請けといった“超”多段階下請けの話もたまに聞くが、この社数ならそれも当然だろう。

 これだけの数のITベンダーが集積していると、顧客である企業や公共機関のあらゆるニーズ、どんなワガママにも応えることができる。20万人月という超巨大プロジェクトも多重下請け構造の中で消化することができるし、「予算が限られている」とIT部門が泣き付けば、SIerは食い詰めた受託ソフトウエア開発会社を使うなどして、なんとか対応しようとする。もちろん丸投げもOKだ。

 ユーザー企業などのIT部門はこうしたIT業界、具体的にはSIerへの依存をどんどん強めた。例えは悪いが、甘やかされて育った子供のよう。言えば何でもやってもらえる。自分で手を動かす必要はないし、頭を使う必要もない。その結果、多くのIT部門がスポイルされてしまい、この「極言暴論スペシャル!」の第2回に見たように、非効率をシステムで固定するという“愚挙”まで行ってしまった。

 実は、こうした傾向は、ITベンダーが2000年頃から推進した「ソリューションプロバイダー」路線により助長された。ソリューションとは解決策のことであり、その提供者になるのは間違いではない。「お客さんの悩みを解決する」は簡単に「御用聞き」に転化する。このソリューションプロバイダー路線は、日本のITベンダーの致命的な欠陥が生み出した“あだ花”だったのである。