あるITベンダーの経営者がこんな話を披露してくれた。日本のIT業界をよく知る外国人から「日本のIT業界は全くダメだ」と言われそうだ。さすがにムカッとして「そんなことはない」と反論しようとしたら、相手は「世界に全く貢献しない日本の業界など産業としての存在価値は無い」と言い放ったそうだ。「さすがに、ぐうの音も出なかった」とその経営者は話していた。

 確かに、ソフトウエア開発を請け負う“純粋な”SIerや受託ソフトウエア開発会社はもとより、コンピュータメーカーも含め日本のITベンダーは、世界に対してほとんど価値を提供できていない。「日本のITベンダーだってグローバル展開を始めている」と反発する人もいるかと思うが、それは単に世界で商売しようとしているだけの話である。

 要は、ITの領域では日本発の技術や、それをベースにした製品・サービスがほとんどないのだ。画期的な技術を生み出すことで新たな価値を提供するのがIT産業である。その意味で日本のIT業界は世界に貢献していない。というか、IT産業ですらない。「日本にはIT産業が無い。IT利用産業があるだけだ」と大手ISPの経営者が話していたが、まさにそれが日本のIT業界の姿である(関連記事:日本にはIT産業は無くIT利用産業も無い

 問題はここからだ。実は、日本のITベンダーは日本や日本企業に貢献できていない。「何を言う!」と怒るであろう業界関係者に聞くが、日本のユーザー企業がIT活用で欧米企業に差を開けられつつあるのはなぜなのか。日本ではメーカーといえどもSIが主たるビジネスだが、それは価値をほとんど生まない御用聞き。しかも、その低付加価値の牢獄に大量の技術者を閉じ込めている。

 今、グローバルでビジネスの“デジタル化”が急速に進展しているのは周知の事実だ。IT活用の優劣が企業の成長や国力の差となる。そうした中、「後追い」「御用聞き」「労働集約」を特徴とする、およそ「ハイテク産業」とはかけ離れた日本のIT業界は、日本企業や日本全体に貢献するどころか、足を引っ張っている。その“不都合な真実”を明らかにする。