久しぶりに「極言暴論スペシャル」をお届けする。今回は、ユーザー企業のIT部門から丸投げされていたシステムの保守運用業務からITベンダーが撤退する動きについて、読者アンケート調査結果について報告する。その結果は、多くのIT部門にとって背筋が凍るようなものとなった。ただ、「理不尽な要求に付き合い切れない」として客を見限るITベンダーの動きを正しいと考える私には、想定を超える好ましい結果となった。

 極言暴論スペシャルでは、ITproの私のコラム「極言暴論」で取り上げたテーマのうち、より深掘りするべき重要なテーマについて特集記事としてまとめている。これまでIT業界の多重下請け構造やIT部門の劣化といったテーマで識者との対談記事などをお届けしたが、今回は初の試みのアンケート調査。極言暴論の読者を対象に「客を見限る」「ITベンダーに見限られた」という経験などの有無を聞いた。

図1●システムの保守運用業務からITベンダーが撤退する動きが広がる
図1●システムの保守運用業務からITベンダーが撤退する動きが広がる
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 まずは図1を見ていただきたい。このアンケートでは、回答者にITベンダー関係者かユーザー企業関係者かを聞いたうえで、ITベンダー関係者には「あなたが所属するITベンダーでは最近、ユーザー企業の情報システムの保守運用業務から撤退したことがありますか」と聞いた。一方、ユーザー企業関係者には「最近、あなたの所属する企業の情報システムの保守運用業務からITベンダーが撤退したことがありますか」と質問した。

 図1は両者の回答結果を1つのグラフにまとめたものだが、驚きの結果が出た。ITベンダー関係者86人が「ユーザー企業のシステム保守運用業務から実際に撤退した」「撤退する予定がある」と回答。ユーザー企業は21人が「ITベンダーに撤退された」「撤退を通告された」と回答している。両者を合わせると、全体で107人、約3割の回答者が「撤退・撤退予定」という状況だ。

 この調査は、システムの保守運用業務からITベンダーが撤退する動きについてまとめた2017年10月23日付の極言暴論の記事で、最後に読者からアンケートを求める形で実施した。実施期間は10月23日から11月3日までの約2週間。システムの保守運用業務の外部委託に問題意識を持つ読者がアンケートに答えたと見られるため、「撤退」あるいは「撤退予定」の割合が高く出たと想定される。

 ただ全体の傾向として、システムの保守運用業務からITベンダーが撤退する動きが広がりつつあることは間違いない。実は、極言暴論の記事を書いた時点で、私が把握していた撤退の動きは3件。そのため、「アンケート調査で撤退や撤退予定の回答は多くても1桁、ひょっとするとゼロもあり得る」というのが私の事前予想だった。「3割」の結果は想定外と言うしかない。