システムの保守運用を担当する技術者はよく「システムは作ってからが大事だ」と言う。あまりに当たり前すぎて、これについて述べることは何もない。保守運用担当者は次のように不満を話す。「それなのに、システム開発のほうが注目されるのは何故だ」。あまりにくだらなくて何か言う気にもなれないが、一言だけ。「新しい事を試みるのだから当たり前でしょ!」。

 ITベンダーの経営者、そしてユーザー企業のCIO(最高情報責任者)やシステム部長も、似たようなことを言う。「保守運用を担当する技術者は、システムという企業や社会にとって重要なインフラを担っているんだ」。そのような話を聞かされると、やはり「その通りですね」としか言えない。何か欺まんを感じる。もし本当にそう思うなら、保守運用担当者のサラリーをもっと高額にすべきだろう。

 東京海上日動火災保険のIT部隊のトップを務め、最近、情報サービス産業協会(JISA)会長に就任した横塚裕志さんとの対談にインスパイアされて書くことにした「極言暴論スペシャル!」だが、2回目の今回はシステムの保守運用の問題について書く(関連記事:極言暴論対談!「 COBOL資産を守って、若者の可能性をつぶす愚」)。

 ITベンダーにとっての上得意は、今も昔も金融機関と公共機関だ。この二つのセクターがIT業界に落としてくれるカネは、全体の4割ほどを占める。システム刷新や統合プロジェクトの金額も巨額だが、それよりも日常的に請け負っているシステムの保守運用業務が抜群に儲かる。特に金融機関のシステム保守はITベンダーにとって金城湯池なのだ。

 金融機関のシステムはまさに重要な社会インフラなので、金融機関の金払いは良い。なんせ大手金融機関なら1社だけで、年間で500億円以上の保守費用をかける。その費用の大半が、担当するITベンダー各社に流れるわけだ。ただ、保守するのは大概、スパゲティー状にコードが複雑化したCOBOLアプリケーションだ。この事実がユーザー側にも、IT業界にも暗い影を落としているのだ。