東京海上日動火災保険のIT部隊のトップを長く務め、ユーザー側のご意見番として知られた横塚裕志さんが、なんと情報サービス産業協会(JISA)のトップに就任した。JISAと言えば、NTTデータをはじめとするSIerや、大中小の受託ソフトウエア開発会社などが集まる業界団体。私が常々イチャモンをつけている人月商売、多重下請け構造の中心地だから、もうビックリである。

 横塚さんには、私が日経コンピュータの編集長をしているときに大変お世話になった。その頃、横塚さんは東京海上日動システムズの社長を務めるかたわら、情報システムやIT部門の在り方、技術者の働きがいなどで積極的に発言しており、日経コンピュータにも長期連載を執筆していただいた。東京海上日動システムズは外販を行っていないから、当時の横塚さんはユーザーを代表する識者と言えた。

 その横塚さんがITベンダーの業界団体のトップとは、本当に驚いた。横塚さんはいったい何をしたいのか。そこで「極言暴論」でIT業界からもIT部門からもにらまれている私が、「JISAの横塚会長」に対談を挑むことにした。その内容は「極言暴論対談!」として、既にITproに掲載されている。今回は、横塚さんとの対談でインスパイアされた暴論を「極言暴論スペシャル!」として3回にわたり記してみようと思う。

 対談してみて少し安心したことに、横塚さんには業界のボスになろうというつもりは一切無い。むしろITベンダーの経営者らを啓蒙して、日本のIT業界を少しでも良い方向にもって行こうと考えているのだ。だが、完全には安心できない。実は、これまでのJISAの歴代会長も就任時には、人月商売や多重下請け構造の変革の重要性を口にするが、結局何もできずゴルフの話ぐらいしかしなくなったからだ。

 そんなわけなので、このスペシャルでも「あんたら、バカじゃない」という暴論を書いて、横塚会長をはじめ、JISA内にごくわずかに存在する改革派の経営者へのエールとしよう。せっかくなので、ITベンダーだけなくユーザー企業のIT部門も斬って捨てる。両者は本当によく似ており、風雲急を告げる世間の動きに全く鈍感なITムラ社会の住人同士だからだ。