情報システムの開発や運用を委託するIT企業をどう選ぶか。課題が2点ある。一つは、自社の業務に精通している企業、つまり「正しい相手」をどう見つけるか。もう一つは、その選定が妥当だと経営陣に納得してもらうために、どう説明するか。『「動かないコンピュータ」撲滅のための10カ条』を参考に考えてみたい。

 「またいつもの所か。もっと良い委託先があるのではないか。探してみたのかね」――。「一度も付き合いがない相手に頼むのか。『大丈夫です』と君は言うがその根拠は何か」――。

 情報システムの開発あるいは運用に関わる何らかのプロジェクトを始めるにあたって、情報システム責任者が委託先となるIT企業を選定し、「ここを使います」と経営陣に上申すると多くの場合、こうした質問が出る。

 重要なプロジェクトになればなるほど、IT企業の選定に経営陣は本来慎重になるべきである。これまで無かった情報システムを新たに作る。既存の基幹システムの運用と保守を外部に委託する。こうしたプロジェクトに失敗したら、業績に打撃を与えるからだ。

 冒頭に紹介した通り、情報システム責任者が安全を期して長年付き合いがあるIT企業を選べば、「変わり映えしない」と言ってくる。冒険をしようと新しいIT企業を選べば、「実績がある企業のほうがよいのでは」と指摘してくる。情報システム責任者にとっては、適切な委託先を選ぶことに加え、経営陣の承認をどう取り付けるかという課題がある。安全を期す場合、冒険をする場合、両方について考えてみよう。