社長や経営陣、他部門の長が情報システム部門の責任者に簡単に聞ける質問がある。それは「もっと安く頼めないか」である。だが、それに答えるのは簡単ではない。どの仕事をどこに、どう頼んでいるか、いったん棚卸しをしておく必要がある。そのうえで「ソーシング」の方針を立て、安くなる案件を回答の材料にしよう。

 「もっと安く頼めないか」。子供でも言える質問だと書いたら、多くのビジネスパーソンに失礼かもしれないが、この単純明快な問いは至る所で発せられている。情報システム部門の責任者は、この問いから逃れられない。質問の例文はいくらでも挙げられる。

 「この起案書にある開発費だが、もう少し下げられないのか」「いつも同じ業者に頼んでいないで、新しい外注先を探して競争させてはどうか」「うちはITの会社ではない。システムの運用など外に全部頼めば安くできるだろう」「インドで開発すると安いと聞く。オフショアと呼ぶらしいが、それを検討したのか」「システム子会社に外部の仕事をする要員がたくさんいる。彼らをうまく使って内製させたらキャッシュアウトを減らせるのではないか」。書いていくとキリがない。

 この手の質問が厄介なのは、誰でも簡単に問えることだ。重要なシステムの開発起案書を提出した経営会議で、社長や役員が発する。部門長が集まる定例の連絡会議でひょんなことからコストダウンの話になり、「そう言えば情報システム部門はどうなのか」と、調達コストの件で絞られた生産部門の長が話を振ってくる。

簡単だが強力な質問にどう答えるか

 情報システム部門内であっても、他部門から異動してきた若手が「またこの会社に頼むのですか。同業他社の知人から聞いた別の会社は新しい開発手法を持っていて、この半額でやれるそうです」と言い出したりする。

 本欄の題名が「社長の疑問に答える」なので、若手の疑問はひとまず置いておくとしても、経営陣や上司からの問いにはうまく答えなければならない。