「将来を担う人材は育っているか」。経営者から問われたらどう答えるか。求められているのは、所属部門の利害を超えて行動できる人材である。それには組織全体を見る力、「コンセプチュアルスキル」が欠かせない。このスキルを持たせることを意識して、案件や機会を割り振る必要がある。

 人材育成は経営トップが最も関心を持つ事柄である。各部門の責任者を見かけると、経営トップは「将来を担う人材は育っているか」と問いかける。情報システム部門も例外ではない。

 「各部門の個別最適にとどまらず全体最適を考える人材が欲しい」。多くの経営トップがこうした期待を口にする。新しい何かをやってのける人材を求める声もあるものの、単独の部門では実現できない何かであることが多いから、結局は会社全体の利益を意識して行動できる人材ということになる。

 経営トップの期待がそうであるなら、情報システム部門長は「技術者単価の引き下げなど面倒な交渉をIT企業を相手にこなせる人材を育てています」とか「Web関連の最新技術を身に付けた若手が出てきました」などとは答えないほうがよい。そうした人材も必要だが、経営トップは「システム部門の仕事をするのは当然、それだけでは困る」と受け止めるに決まっている。