「ITがもたらす未来」について、経営者が問うてくる可能性がある。「分かりません」は論外だが、「当社には無関係」と答えてもまずい。時には未来予測を読み、回答を考えておくとよい。専門家としてではなく、経営者になったつもりで考えてみよう。

 「うちの社員だけに考えさせると小さい話にまとめてしまう。君たちが入って大きな話にしてもらいたい」。

 ある企業の社長がコンサルティング会社にこう頼んだという話を聞いた。この社長はデータ量の増大を示す流行語に関心を持ち、「当社はどのように取り組めばよいか考えよ」と社内に指示を出す一方、コンサルタントを雇った。無難な報告を上げて済ませたい社内に刺激を与えようとしたわけだ。

 情報システム部門など企業内のIT専門家にとって、この逸話は他人事ではない。社長や役員などが「この新しい言葉が示す動きは当社に関係するか」と聞いてくる可能性は常にある。

 未来予測の多くは技術の動向ではなく、ビジネスや社会の変化を示すものになっている。ITを使いこなすことで「(ネット通販に代わって)地元の小売店における購入が復活する」「ナレッジワーカーのキャリアパスは破壊される」といった予測を聞けば、企業の舵取りを担う経営者はITにさほど関心が無くても、「この予測は本当か」と誰かに聞きたくなる。

 ITの専門家である以上、経営者が質問してきた事柄について、「知りません」「分かりません」などと答えるわけにはいかない。何らかの答えを日頃から考えておく必要がある。