ITに関する経営者の疑問に情報システム責任者は答える義務がある。経営者と対話できる関係をどう築いたらよいだろうか。本連載では、IT専門家と経営者の双方が興味を持てる調査結果を題材に、対話の進め方を考えてみたい。

 「役員は50人前後いましたから社長と話など滅多にできません。それだけに、機会があったときに質問に即答できるよう、あれこれ考えていました」。

 日本を代表する製造業の情報システム責任者から聞いた話である。新聞にITに関する記事が載ると、社長が「この動きが進むとうちの製品はもっと売れるか」などと突然聞いてくる。風が吹くと桶屋は儲かるかといった類の質問だが、「分かりません」とは言えない。自分なりの答えをその場で述べられるよう、普段から本業とあまり関係ない記事でも読んで「自社製品に関係しないか」などと自問自答していたそうだ。

 「社長と話ができるか」。経営に影響を与える情報システムを預かる責任者にとって重大な問いである。これは「社長」と「システム責任者」に限ったものではない。例えば管理担当の代表取締役副社長がシステム部門も管掌したら、システム責任者は副社長に報告しなければならなくなる。事業部門の出身者がシステム責任者に着任したら、システム担当者は自分の業務内容を新任の責任者に説明する必要がある。

 「社長と話ができるか」という問いを「ITに詳しくない事業側の人と対話できるか」に置き換えれば、全てのIT専門家に関わる課題となる。「社長の疑問に答えるIT専門家の対話術」を考えていく前に、相手がITをどう捉えているかが分かる調査結果を紹介する。