約3兆円といわれる国内の鮮魚流通市場に風穴を開ける。手にする武器はiPadと専用アプリ。ITを駆使して産地と飲食店との間にある無駄を省き、「売り手都合」の業界慣習を変える。標榜するのは「鮮魚のアマゾン」。蓄積した受発注履歴で料理人を支援する。松田雅也代表取締役は「2020年までに3000億円企業を目指す」と意気込む。

写真:新関 雅士
写真:新関 雅士

 味をないがしろにして、利益率や回転率ばかりを追求する飲食チェーンが、今の日本には多すぎる。大口を叩くようですが、そうしたチェーンを退場させて日本の食文化を守ることが、私の使命だと考えています。

 ITと物流を駆使して無駄だらけの業界構造を変革し、新鮮な魚を出すお店を増やしたい。鮮魚流通における「アマゾン・ドット・コム」を目指します。

 鮮魚の受発注は従来、電話やFAXを通じて行っていました。このプロセスをデジタル化するのが、当社の事業の根幹です。鮮魚を扱う飲食店に、専用アプリを組み込んだiPadを無償で貸与。アプリ上で欲しい魚を注文すると、当社の担当者が産地の漁港や築地市場などで魚を仕入れ、必要な加工を施して配送します。首都圏を中心に、既に約750店舗が導入しています。

 最大の強みは「需要」と「供給」をマッチングさせるスピードにあります。鮮魚の賞味期限はとにかく短い。安く大量に仕入れることに成功しても、売れずに腐らせてしまっては意味が無い。この問題を解決するのがITです。

 割烹と寿司屋、洋食店では好まれる魚が異なります。養殖と天然だけでなく、料理長によっては求める「さばき方」すら違う。アプリを通じて注文してもらうことで、各店舗の発注パターンをデジタルデータで蓄積できます。

 ただし、飲食店では「翌日納品」が原則です。各店舗のニーズを夜間に集約し、翌日市場で買い付けて2日後に配送しているようでは間に合わない。