米セールスフォース・ドットコムから出資を受けたことで話題になった、統計分析ツールのベンチャー企業、サイカ。同社の「xica adelie(サイカアデリー)」は、統計分析の知識が全く無くても利用できることを売り文句にする。平尾喜昭CEOは、「統計の専門家ではなくビジネスの現場の人にこそツールが必要だ」と語る。

写真:栗原 克己
写真:栗原 克己

 私の起業家としての原体験は、中学生だった2000年に父が勤めていた会社が倒産したことにあります。父の勤務先はかなり大きな会社で、ニュースでも大々的に報じられました。そして多くの方が、倒産によって過酷な状況に追い込まれました。

 こうした悲しい状況をどうにかしたい。世の中の悲しみをなくしたい。それ以来、このようなことを人生の指標として生きてきました。

 大学生活の半ばまでは、音楽の力で世の中の悲しみを無くしたいと考えていました。ロックバンドのボーカルとして、レコーディングやライブ活動に真剣に取り組んでいました。

 転機になったのは、慶應義塾大学総合政策学部で竹中平蔵教授のゼミナール(ゼミ)に入って、統計的な分析に触れたことでした。竹中ゼミはマクロ経済学を研究テーマとするので、政府の打ち出す政策が経済にどう影響を与えたのか、統計分析ツールで様々な角度から分析していました。

 例えば政府系金融機関の貸し付けが増えると、中小企業の業績がどう変わるのか。そういったことを分析しました。この例では政策金融による貸し付けが増えることで、中小企業のROA(総資産利益率)が低下し、結果的に中小企業の業績に悪影響を与えていたことが分かりました。