2012年に正式サービスを開始し、月間利用者数約55万人、約7000社の企業ユーザーを擁するまでになったビジネスSNS、「Wantedly(ウォンテッドリー)」。その特徴は、企業と個人のマッチングを支援する際に、給与や福利厚生といった労働条件ではなく、互いのビジョンが合致するか否かを重視する点にある。運営会社ウォンテッドリーのCEO(最高経営責任者)を務める仲暁子氏は、「働く人のモチベーションは、“自分が成長できるか”、“企業の理念に共感できるか”に変わってきている」と語る。同社が理念として掲げる「シゴトでココロオドル人をふやす」サービスについて聞いた。

(聞き手は岡部 一詩=日経コンピュータ


「Wantedly」の概要は。

写真●ウォンテッドリーCEOの仲暁子氏
写真●ウォンテッドリーCEOの仲暁子氏
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 企業と個人がつながったり、個人同士が出会えるプラットフォームを提供するビジネスSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)だ。

 個人ユーザーは「Wantedly」上で自分のブランディングができる。履歴書とは違い、自分のキャリアビジョンやスキル、他己紹介や人的ネットワークなど、立体的なプロフィールを作ることが可能だ。

 企業ユーザー向けには、個人ユーザーにリーチできる機能があり、人材採用などに使われることが多い。しかし、募集要項に福利厚生や給与といった条件は書いてもらっていない。自社がどんなビジョンを掲げているかといったことを中心に記載してもらっている。

 企業と個人とが互いのビジョンに共感できるかが大切。極論するとそれだけで、企業と個人のマッチングを実現する。

 とはいえ、「Wantedly」はあくまで、ビジョンが共有できそうな企業に個人が訪問したり、個人同士がつながりを持つための場。人材サービスを手掛けているつもりはない。

なぜ、そうしたサービスを作ったのか。

 当社は、「シゴトでココロオドル人をふやす」をミッションとして掲げている。私は「仕事は面白いもの」と思って、最初、金融機関に入社した。けれど、意外と仕事を楽しんでいない人が多かった。早く休日にならないか、早く定時にならないかと考えている人は多い。そうではなく、仕事を通して自己実現を目指す人を増やしたい。

 仕事へのモチベーションは変わってきている。高度経済成長の時代は、給与や福利厚生といった“外的動機付け”で働く人が多かったはず。だが、今は決して右肩上がりの状況ではない。そんな中、仕事でいかに自分が成長できるか、企業の理念に共感できるか、といった“内的動機付け”に重きを置く人が増えてきている。

 人材サービス業界には固定観念がある。求人側である企業の出す条件と、求職者である個人のスキルとをマッチングさせる、というものだ。

 しかし、我々は転職サイトを運営しているわけではないので自由にやっている。当社のサービスはビジョン共感型。“内的動機付け”を重視するユーザーを支援する、新しい価値観を持つサービスができたと思っている。