全日本空輸(ANA)のCIOに就いてから6年目を迎えた。実は、私はIT部門としてのキャリアよりも、営業としてのキャリアが長い。20年以上にわたりITを使って営業をどう改善していくかといった取り組みを行ってきた。
営業のときはIT部門に対して「こうしたらいいんじゃないか」「ああしたらいいんじゃないか」など、沢山文句を言っていた。「だったらお前がやってみろ」と経営トップに言われ、システム子会社への1年の出向を経て、ANAのCIOになった。
要望を伝えるユーザーサイドからの景色と、システムで実現するIT部門からの景色は全く違っていた。だが、私がユーザーサイドのときに実現したかったことは、システムを作る立場になってからも変わらない。
実現したかったのは「世界一」と「スピード」だ。作るからには、世界一のモノを作りたいし、世界一のモノを提供したいと考えていた。IT部門に来てからは、部下にも「どうせやるなら世界一を目指そう」と話している。良いモノを作るだけでなく、ときにはスピードも大事だ。私はその両方を実現するために、システムのオーナーシップをIT部門に持たせた。
これまでのIT部門は、ユーザー部門から言われたものをシステム化する“受け身”の仕事のスタイルだった。だが、各ユーザー部門の要求に合わせてシステムを構築していては、部分最適になりがちだった。