「開発案件をたくさんやろう。世界一の案件数をこなそう」と常日頃からIT部員にハッパを掛けている。ネット証券の世界では商品や手数料で差異化するのが難しくなっており、顧客の利便性を高められるようなシステム開発をなるべく多く手掛けることが当社の競争力につながるからだ。
多少の増減はあるものの、当社では常時200件のシステム開発案件が同時並行で動いている。年間約2000件で、大手証券会社の5倍くらいの件数だと思う。
もちろん、ただ件数をこなせばいいというわけではない。できるだけ安価かつ高品質なシステムを作るよう現場に指示している。ここで最も大事になるのが、要件を定義するスキルになる。要件定義力の乏しい人材に仕事を任せると、顧客が何を求めているかをすっかり忘れ、自分の得意なやり方で強引にシステムを作ろうとする。できないことはやらないというケースだ。
その逆もある。言われたことを全てやろうとするパターンがそうだ。システムに実装する機能を重要度に応じて取捨選択しないため、“お化け”のように開発要件が膨らんでしまう。
我々IT部門の要件定義力は、強化すべき余地がまだある。このための近道はなく、研修などで地道に学んでもらうことが大切と考え、教育投資をしている。
2014年から、当社向けにカスタマイズしてもらった社外の研修メニューをIT部員たちに受講させている。昨年は54人が参加した。ここで、要件定義やプロジェクトマネジメントなどのスキルを磨かせるのが狙いだ。修了後は、PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)の資格試験やプロジェクトマネジメントの知識体系である「PMBOK」に関するテストを受けさせている。