先日、あるIT企業の役員の方々と会う機会があった。そのとき、「ウチにはプロジェクトを任せられるSEが少なくて困っている」とある方が言われた。筆者は「そのたぐいの話はどこの会社でもよく聞きますが、日本のIT企業はもともとそんなSEを育てようとしているのですかねえ。私には、とてもそのようには思えませんが」と答えた。

 事実、多くのIT企業でプロジェクトを任せられるSEが少ないという声は結構聞く。きっと日本のIT業界では、ITが分かるスペシャリスト的なSEは多いが、リーダーシップを持って物事を進められるSEは少ないのだと思う。

 では、なぜ日本のIT企業ではプロジェクトを任せられるSEが少ないのか。IT企業はどんな手を打てば良いか。今回は、この問題について筆者の考えを述べる。

今のやり方では一部のSEしか育たない

 プロジャクトを任せられるSE、すなわち名ばかりのプロマネ(プロジェクトマネジャー)ではなく“真のプロマネ”を育てるには、IT企業はそれなりのことをやらなければならない。ITに強いSEの育て方とは違う。

 だが日本のIT業界で、それを考えてやっているIT企業はそう多くない。今の多くのIT企業のプロジェクトを任せられるSEは、おおよそ次のようにして育っている。

 SEが入社すると新人研修などをやり、少しITが分かるようになると、どこかのプロジェクトに入れる。そして先輩の下で仕事をさせる。

 SEマネジャーや先輩SEはそのSEに対し、「ITに強くなれ」「なぜそれが分からないのか」などと四六時中言う。そしてSEはだんだんとITに強くなる。いろんな経験もする。そうやって成長する。

 そして数年経って、マネジメント能力がありそうなSEにプロジェクトをやらせる。彼ら彼女らはその後いろんな経験をして、だんだんと成長する。そして、その中の何人かがプロジェクトを任せられるSE、真のプロマネになる。おおよそこんなやり方だ。こんなやり方では、マネジメント向きのSEや外交的なリーダーシップのあるSEといった、SEの中の一部しかプロジェクトを任せられるSEには育たない。