どこのIT企業でも顧客や営業や仲間のSEに頼りにされ、信頼されているSEはいる。そして、顧客企業の情報化や会社のビジネスに貢献している。

 だが、多くのSEはそうではない。技術偏重でビジネス意識が薄い、また仕事に対する姿勢が受け身で、営業との信頼関係もあまりない。その上、顧客と往々にして壁を作り、顧客に必ずしも信頼されていない。中には、40代くらいになると次第に影が薄くなるSEもいる。こんなSEが多い。これでは顧客企業の情報化や会社のビジネスに貢献するどころではない。

 SEのこのような状況を見て、多くの営業や経営者などから「SEはなぜこうなのだ。ビジネスのことを考えているのか」などと評されている。そして、どこのIT企業でもSEの育成やSEの在り方が問題になっている。読者の多くの方は、これには異論はないと思う。

 だが、それは残念ながら今に始まったことではない。日本のSEは長年、この問題を抱えている。筆者はこの問題を何とかしたいと思い、約20年前、日経コンピュータに「IT企業のSEの在り方」について連載を始め、IT企業の方々にこのSEの問題を問題提起した。なぜ問題提起したか、その動機について改めて読者の方々に説明したい。

SEはシステムを売るときの道具

 筆者の現役時代のSEの状況は、今と同じような状況だった。約50年前だが、当時の多くのSEは「技術に強いSEが優秀だ」と考える風潮があり、ビジネスにあまり関心のないSEが多かった。また多くのSEは仕事も受け身の姿勢だったし、営業との関係も結構ギクシャクしていた。

 また、営業の中にはお客様に体制図を提示し、「SEを何人付けます」などと顧客に約束する担当者もいた。特に販売の競合時は、その傾向が強かった。すなわち、SEはある意味でシステムを売るときの道具だった。そしてSEは成約後は、往々にして顧客に拘束されていた。こんな状況だった。