ITベンダーの経営幹部と話をすると、最近は必ず「製造業の経営者はIoT(Internet of Things)やビッグデータ分析への関心が非常に高い」といった話になる。特に関心が高いのが、自社工場での活用の可能性だそうだ。製造業のライバルであるドイツで官民挙げて「インダストリー4.0」として、IoTやビッグデータ分析などの活用、標準化を推進していることにも触発されたらしい。

 ところが、「製造業のIoTなどへの投資意欲は鈍い」とする、一見相反する意見も聞こえてくる。もちろん普通に解釈すれば、「製造業の経営者はIoTやビッグデータ分析に強い関心があるものの、実際の投資には二の足を踏む」という日本企業にありがちなパターンが浮かんでくる。

 経営者の関心が高いことで、ユーザー企業のIT部門からの引き合いが強くなり、ITベンダーもエース級の営業や技術者を配置し、ドイツや米国の最新事例を仕入れて提案に臨む。だが、肝心のIT部門は情報収集に熱心なだけで、システム投資を予算化する動きを見せない。それでもITベンダーとしては、IoTやビッグデータ分析がバズワード化しており、ライバルも力を入れているから、提案活動に手を抜くわけにもいかない。ITベンダーにとっては、まさにトホホの状態なのかもしれない。

生産管理システムも機能せず

 ここで記事を終えると、いかにもありがちな話だが、問題の根はもっと深いようだ。例えば同じITベンダーでも、経営陣と会う立場にあるコンサルタントによると、「確かにIoTやビッグデータ分析に対する経営者の関心は高いが、詳しく話を聞いてみると、経営者の多くは、別のところに問題意識がある」とのことだ。