完全にバズワードと化したIoT(インターネット・オブ・シングズ)と人工知能(AI)だが、その流行ぶりはすさまじい。新聞の紙面にこの二つの言葉が踊らない日はなく、一般向けのテレビ番組でも頻繁に登場する。ITベンダーは、どんな新製品・新サービスの発表でもIoTやAIの文言を散りばめようとするし、国のIT関連政策にも必ず盛り込まれている。

 この程度ならまだ普及前のクラウドが、バズワードにすぎなかったころとあまり違いはない。違うのは、製造業や小売業など多くの企業の経営者が強い関心や問題意識を持ち、自らIoTやAIの意味をそしゃくして、自社の事業への活用を自らの言葉で語るようになったことだ。それどころか、IoTやAIを活用した新サービスの創出・育成を最重要の経営戦略として語る経営者も増えてきている。

 以前も、例えば「従来のASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)とクラウドは何が違うのか」といった議論がなされていたころから、クラウドにいち早く関心を持つ経営者もいるにはいた。だが、その場合も「クラウドを活用すればITコスト削減ができるかも」といった程度の関心で、詳細の調査や採用検討は、IT部門に任せきりのケースがほとんどだった。

 それに比べると、日本の企業経営者はIoTやAIに対してはるかに“前のめり”になっている。

技術に関心があるわけではない

 一方、企業のIT部門やITプロフェッショナルはと言えば、IoTやAIに懐疑的な人が依然として多い。「IoTは以前からあったM2M(マシン・ツー・マシン)の言い換えにすぎない」、「過去にもAIブームがあったが、結局は使い物にならなかった」といった意見をよく聞く。なかには、「社長はITベンダーの口車に乗せられている」といった、少々ステレオタイプのぼやきを口にする人もいる。