「我々は世界最大のソフトウエア会社になる」。そう宣言するのは、既存のITベンダーでも、新興のITベンチャーでもない。重電の雄、米ゼネラル・エレクトリック(GE)だ。今、IoT(モノのインターネット)を「インダストリアル・インターネット」と言い換え、大々的なプロモーションを展開するが、その方向感を端的に表現したのがこの言葉だ。

 単に宣言しただけでなく、2011年にシリコンバレーに研究開発拠点を設置し、この3年間に10億ドル(1150億円)を投資すると共に、シリコンバレー発のITベンチャーを相次いで買収している。さらに2014年8月には、米EMC傘下のピボタルなどと組んで、テラバイト、ペタバイト級のデータを蓄積して、リアルタイム分析できるようにする「データレイク」構想もぶち上げた。

 まずGEが目指すのは、産業機械や鉄道車両に組み込んだセンサーなどから大量のデータを吸い上げ、故障を事前に予測して適切な保守サービスを提供しようというもの。これだけを聞くと、何のことはない。コマツが既に実現している「KOMTRAX」サービスや、日立製作所が目指す「社会イノベーション事業」と同様の取り組みである。

 ただ、こうした日本企業とGEとには決定的な違いがある。それは“ビジョン設定力”である。GEでソフトウエア部隊を率いるビル・ルー副社長はこう話す。「これまでは消費者向けのインターネットの時代だった。1997年に誰が今のネットビジネスの隆盛を予測できただろうか。そして今、産業のインターネットの時代が始まる。これから15年の間に、消費者向けのインターネット以上のビジネスチャンスがある」。

 そして今後、あらゆる機械・機器が「SDM(ソフトウエア・デファインド・マシーン)」になるという。SDMとはもちろん、SDN(ソフトウエア・デファインド・ネットワーク)のアナロジーだが、スマホがソフトウエアによって時計になったり、新聞になったりするように「機械・機器が何者であるか」はソフトウエアによって“定義”されるようになる。