未来を予測する有力な方法が二つある。一つは、今や旬を迎えたビッグデータ分析である。クラウドサービスやソーシャルメディア、IoT(Internet of Things)などから得られた膨大なデータを分析することで、今後の消費動向などをつかめるかもしれない。そこでマーケティング上の課題として、ビッグデータ分析に取り組む企業が増えつつある。

 もう一つの方法は、「パーソナルコンピュータ」の概念の提唱者として名高いアラン・ケイ氏のあの格言にある。「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」。企業活動で言えば、多くの人に「ワォ!」と言わしめる全く新しい製品やサービスを創り出せれば、自分たちが“予測”した通りの巨大市場を出現させ、“予測”した通りに世界を変えてしまうことができる。

 ある意味、アラン・ケイ氏の格言は、ビッグデータ分析に対する警鐘とも言える。「過去のデータをいくらこねくり回したところで、未来のことなど正確に分からないのだから、そんなものに頼らずに自らの創造性で、自分が思い描く世界を現出させよ」。そんなメッセージにも読み取れる。

 この格言の最も忠実な実行者こそスティーブ・ジョブズ氏だろう。卓越した創造力とリーダーシップでiPhoneを生み出したことで、巨大なスマートフォン市場を現出させた。それにより、PCが栄華を極めた時代は突如として終わりを告げた。これだけの激変を予測できたのは、スティーブ・ジョブズその人以外にはいなかったはずだ。

 ちなみに、アップルの現在のCEO(最高経営責任者)であるティム・クック氏は、データに基づいて物事を決める経営者だと言われている。それがアップルの株主や熱狂的ファンの不満や不安を呼び起こすのだが、データを重視する経営は米国企業の経営者としては王道である。経営者にそうした姿勢があるからこそ、米国企業はビッグデータ活用でも先頭を突っ走っているわけだ。