日本企業が2017年度のIT投資額を大幅に上積みする――。

 日本銀行が四半期ごとに実施している「全国企業短期経済観測調査」がちょっとしたサプライズだった。一般には日銀短観と呼ばれ企業の景況感をみる指標としてメディアでもよく引用されるが、調査項目の一つに「ソフトウェア投資額」があり、そこには驚きの数字が記載されている。

 最新(6月の調査)の日銀短観では、調査対象企業全体の2017年度のソフトウェア投資計画額は前年度比7.0%増。しかも3月の調査では同3.1%増だったから、わずか3カ月で多くの企業が2017年度のIT投資計画を大幅に引き上げたわけだ。

 この背景を普通に読むと「いよいよ日本企業もIoT(インターネット・オブ・シングズ)などデジタル関連投資に本腰を入れるようになった」となるわけだが、実情はそれほど単純な話ではない。実は、大企業より中堅中小企業のほうがIT投資に積極的なのだ。

 大企業に限れば5.0%増(3月の調査では1.8%増)だが、中堅企業では10.6%増(同4.3%増)、中小企業に至っては21.7%増(同14.1%増)に跳ね上がる。大企業も3月の調査に比べIT投資額を大幅に上積みしているが、多くは非製造業によるもの。非製造業の大企業は3月の調査の時点では0.7%増と前年度に比べ微増でしかなかったが、6月の調査では一気に4.9%増となった。

IT業界も空前の技術者不足

 日本企業が短期間にIT投資額を上積みさせた本当の理由は何か。その答えは日本企業を取り巻く環境を考えれば、容易に推論できる。ずばり人手不足への対応である。中堅中小企業に加え、非製造業は大企業であっても製造業に比べ労働集約型で効率化が遅れ、最近の人手不足の影響は深刻だ。6月までの3カ月は、ヤマト運輸がサービスレベルの引き下げを表明するなど、人手不足や長時間労働が社会問題化した時期とピッタリ重なる。