「経営課題は何か」。日本企業の経営者に尋ねると、必ずと言ってよいほど二つの答えが返ってくる。イノベーションとグローバル化である。もちろん、個々の企業の置かれた状況によって、いろいろなバリエーションがあるが、煎じ詰めればこの二つに集約される。

 少子高齢化で国内市場が縮小する以上、イノベーションを実現して新たなビジネスを創出するか、既存の事業を世界に広げていくしか、日本企業が生き残り成長する道はない。当然、情報システム面でも、イノベーションに資するITとグローバル化に資するITの実現が最重要課題となる。

 このうち、イノベーションに資するITは分かりやすい。今やどんな産業でもイノベーションにはITが不可欠。いわゆる「デジタルビジネス」などと呼ばれる新サービスや新規事業の取り組みで、IoT(インターネット・オブ・シングズ)や人工知能(AI)など最新のITを活用する動きだ。

 では、グローバル化に資するITとは何か。実は、こちらはもっとありきたりのものだ。いわゆる基幹系システムである。今、多くの日本企業がグローバル化を急ぐため、海外企業のM&A(合併・買収)に積極的に乗り出している。当然、買収後には海外企業の経営状況を見える化しなければならない。日本企業の喫緊の課題は基幹系システムのグローバル対応、もっと言えばグローバル統合だ。

 ところが、日本企業はグローバル化に資するITの取り組みが弱い。欧米企業は買収後の統合作業として真っ先にシステム統合に臨む。多くの企業がERP(統合基幹業務システム)を、可能な限りアドオンを作らずに導入しているため、統合作業が容易だからだ。一方、日本企業は自社で独自システムを利用していることが多いため、買収先の基幹系システムを統合するのは容易ではない。