「プロの経営者」という言葉がある。同じような言葉に「プロのCIO(最高情報責任者)」というのもある。複数の企業を渡り歩き、経営者あるいはCIOとして実績を積んだプロフェッショナルを指す。だが考えてみれば、これほど奇妙な言葉もあるまい。ある特定の人たちを「プロ」と呼ぶわけだから、それ以外の経営者やCIOは何者だ、ということになるからだ。

 プロフェッショナルの反対語はアマチュアだが、さすがに「素人の経営者」は存在しない。経営者は皆、プロの経営者でなければ会社が危うい。

 にもかかわらず、プロの経営者という違和感のある言葉をあえて使うのは、この人たちが経営の専門家として市場価値が認められている半面、結果が出なければ即解任という厳しさに身を置いていることを際立たせるためであろう。一つの企業で出世の階段を登り、運も手伝ってトップに上り詰めた“サラリーマン経営者”とは、プロとしての覚悟が違うというわけだ。

 では、プロのCIOはどうかと言うと、やはり奇妙な言葉だが、プロの経営者ほどの違和感はない。なぜならば日本企業には、プロのCIOに対比されるような「素人のCIO」が、それこそ大勢いるからだ。

 「そんなバカな話があるものか。経営者と同様、CIOが素人だったら、それこそ大変だ」と不審がる読者もいるかと思うが、これは紛れもない事実である。大変失礼ながら、ひょっとしたら読者の中にもいるかもしれない。

素人のCIOが2人いる大企業

 言うまでもないが、CIOとは経営とITの結節点となる経営幹部、あるいは経営機能のことである。経営戦略をIT戦略に翻訳して、システム化計画を策定・実行したり、経営陣にIT活用の可能性を伝え、経営戦略に反映させたりするのが主な役割だ。当然、プロのCIOは経営・ビジネスとITの両面に精通している必要がある。