今も昔も変わらないIT部門の役割に「技術の目利き」がある。だが世の中の変化や技術の進化により、目利きする技術の中身や用途、目利きにかけられる時間などが変わった。その結果、多くのIT部門が「技術の目利きもできないのか」と経営者の怒りを買う事態となっている。

 技術の多くが米国生まれであることは今も昔も同じ。ただ以前なら、技術を生み出すのは主に大手ITベンダーで、技術もインフラ周りが大半。IT部門はベンダーを呼んで話を聞き、米国の導入事例を研究するなど、目利きに時間を掛けることができた。むしろ拙速は禁物で、バグが枯れ必要な機能がそろうなど、導入可能となる時期を見極めることが重要だった。

 ところが今は、雨後のタケノコのごとく誕生するベンチャー企業が次々と新技術を生み出す。OSS(オープンソース・ソフトウエア)として開発が進む技術も多い。しかも技術は最初からビジネスとひも付く。当然、ビジネスのデジタル化が重要な経営課題になっている日本企業の経営者の関心も高い。

 IT部門にとって大変なのは、続々と登場する技術を素早く評価しなければならないことだけではない。経営者が期待する目利きとは、技術をどのようにビジネスに生かすのかも含む。その期待に応えようと、米国の事例を調べたところで、事業のプロではないIT部門は通り一遍のことしか答えられない。その結果が「技術の目利き役もできない」という不名誉な烙印だ。

消費者は既にスマホでAIを活用

 では、どうすればよいのか。最近、NTTデータの本間洋副社長が『緑のトマト』(日経BP社)という不思議なタイトルの書籍を執筆し、私は編集面でアドバイスをさせてもらったが、その中にヒントになる一節があった。「デジタルへの対応をどうすればよいのかという悩みに対する一つの答えは、デジタル化によってお客さまを取り巻く環境や顕在化するニーズが変わる中で、そのお客さまにどう寄り添うか」。