「木村さんもよく『全てのビジネスがデジタル化する』って話を書いているけど、ピンと来ないんだよね」。最近会ったシステム部長にいきなりそう言われてしまった。「ビジネスのデジタル化」は最近のIT投資の広がりを示す一種のキーワードだが、このシステム部長にはリアリティーが無いそうだ。

 言うまでもないことだが、今さまざまな産業でITを活用して、既存のビジネスを高度化したり、ビジネスモデルを変革したりする取り組みが活発になりつつある。

 企業のIT活用といえば、以前なら主に会計を中心としたバックヤードのシステムの整備を指した。それがインターネットの普及により、EC(電子商取引)など新たなビジネスに取り組むネット企業が登場したことで、ビジネスでのIT活用の幅が大きく広がった。そして今、多くの企業が、それぞれの本業のビジネスでITを活用して新たな付加価値を生み出そうとしているのだ。

 例えば日経BP社のような出版業なら、紙の雑誌や書籍に加えて、ITproのようなネット媒体を強化し、さらに電子書籍にもチャレンジする。まさに出版ビジネスのデジタル化だが、同様のチャレンジは、他の産業でもどんどん活発になってきている。こうした今の状況を捉えて、「全てのビジネスがデジタル化する」と称しているわけだ。

 だが、もちろん個々の産業によって、ビジネスのデジタル化の進捗には違いがある。コンビニなどの小売業、旅客・旅行業などのサービス業は既にネットバブルの頃から取り組んでいるので、「何を今ごろになって言っているのか」といったところだろう。