「IT部門は、業務全体を把握して全社的な課題や改善点を提示できる唯一の部署」。大手企業のシステム部長から、そんな話をよく聞く。矜持は素晴らしいのだが、実際には違う。それを明確にするため、今回は他部門から来たCIO(最高情報責任者)のことを書く。他部門とは財務経理部門である。

 財務経理部門出身のCIO、もしくはCFO(最高財務責任者)を兼務するCIOというと、どんな印象を持つだろうか。おそらく大方は、「内部統制やセキュリティのことばかり言う堅物」「攻めのIT投資よりも守りを重視する保守派」といったところだろう。

 実は、私も以前にはそんな印象を持っていた。様々な企業のCIOに取材する機会があったが、経理畑のCIOの場合、失礼ながら話が面白くない。「IT部門は融通が利かない」とはよく言われることだが、そのIT部門一筋のCIOに比べても、ガチガチの堅物が多かった記憶がある。

 だが最近、私の中でそのイメージが大きく変わった。今や経理畑のCIOは、誰もが雄弁に経営戦略やそれに伴うIT戦略を自分の言葉で語ってくれるのだ。自社の課題、IT部門の問題点を明確にした上で、それをどのように解決していくかをしっかりと説明する。しかも陽気でオープンマインド。「コミュニケーションの達人」といった人が多い。

 経理畑のCIOは、いわゆる経理屋のイメージとは異なる。むしろIT部門一筋の人よりもCIOらしい人が大勢いる。そして、財務経理部門からCIO有資格者が多数生まれるのは、実は自明のことなのである。