日清食品ホールディングスが2017年1月に、40年にわたり使い続けたメインフレームを撤廃したそうだ。同社がグループ全体の基幹系システムの刷新に乗り出したのが2011年。メインフレームの撤廃により、長きにわたる刷新プロジェクトはいよいよ総仕上げの段階に入るという。このニュースに接し、私は6年前に聞いた、ある人の言葉を思い出した。

 「システム刷新は、切るべきものを切らないと実現できない。基幹系システムではいろいろなプログラムが動いていたが、誰が使っているのか分からないものがたくさんあった。一つひとつ調べだすと、もう何もできない」

 コメントの主には後で登場してもらうが、この発言に多くの読者はうなずくことだろう。大企業のIT部門が基幹系システムを刷新しようとした時、壁として立ちはだかるのが、「誰も使っていないプログラム」の存在だ。

 老朽化したシステムを抱える大手金融機関の場合、全体の6割のプログラムが使われていないのが普通という。金融機関以外でも企業によっては、4割以上のプログラムが、利用者がいないにもかかわらず稼働し続けている。

 使っていないプログラムを捨てない限り、刷新の対象となるシステムは、巨大で複雑怪奇なまま。再構築のコストやリスクは高まるし、無駄な機能を新システムに持ち込むことになる。

 分かりきった理屈だが、IT部門が社内の理解を得るのは難しい。利用部門が「必要になった時に無いと困る」「顧客に迷惑をかけるかもしれない」と難色を示すからだ。IT部門としても、リスクを背負ってまでプログラムを破棄できない。

 その結果、多くの企業で使っていないプログラムを含めた基幹系システムが、「現行どおり」のままハードウエアを乗り換えつつ、生き残ってきた。