「連載を読んだ皆さんは『情報システムを担当する技術者が一人しかいないのはリスクが高すぎる。それではダメだ』とおっしゃるが、少子高齢化が進むなか、現実問題として全ての企業が何人もの技術者を抱えるなんて、もはや無理ですよ」

 先日、日経コンピュータに「ひとり情シスで培う内製力」を連載している成瀬雅光氏に会った際、同氏の口をついて出た言葉だ。成瀬氏はある製造業の現役IT担当者で、IT部門が消滅するという非常事態のなかで、たった一人でシステム刷新を実現した。成瀬氏は、プログラミングや設計のできる一人、あるいは少人数の技術者がシステム運営を担うのが、これからの企業ITの現実解という。

 技術者が一人いればよいというのは極端だ。ビジネスのデジタル化が急速に進む中では、ユーザー企業がシステム内製力を持つこと、つまりプログラミングや設計のできる技術者を社内に抱え込むことの重要性は論を待たない。これからの時代、技術者は多いに越したことはないはずだ。

 だが成瀬氏の言葉で、「はっ」と気付くものがあった。そこで、ユーザー企業が内製力を持つために、全体としてどれぐらいの数の技術者が必要になるか試算してみた。

 試算と言っても簡単なものだ。日本には企業が382万社あると言われている。仮に50万社、つまり全体の13%の企業で内製力を強化するため、2人ずつ技術者が新たに必要になったとする。全体で100万人。もちろん、大企業ではもっと多数の技術者が必要だろうし、新たな技術者が必要となる企業は50万社より多いはずだ。

 だが100万人でも、情報サービス産業協会の集計したIT業界の技術者数とほぼ同じだ。しかも、必要な技術者は、今のIT部門で大多数を占めるプログラムを書かないIT担当者とは違うので、ほとんどのユーザー企業では必要な人数の技術者を抱え込むのは、もはや無理と考えたほうがよい。