SE(システムエンジニア)がIT系技術者の職種であることを疑う人は、ほとんどいない。実際、SEの肩書きを持っている技術者は多い。だが、SEは本当に職種と言ってよいのか。言い方を変えれば、SEは何のプロフェッショナルなのか。

 「SEはITのプロに決まっているではないか」と思う人もいるだろうが、よく考えてほしい。システム開発においては、システムを設計するアーキテクトがいて、プログラマーがいる。プロジェクトの進捗などを管理するのは、プロジェクトマネジャー(PM)だ。

 アーキテクト、プログラマー、PMはそれぞれ極めて専門性が高い“職種”で、それぞれにその道のプロがいる。アーキテクトとプログラマーは比較的近い職種だが、PMは必ずしも技術者の職種とはいえない。マネジメント能力という全く違う技量が要求されるからだ。

 一方、SEの肩書きを持つ技術者の仕事は、人によりバラバラだ。もっぱらプログラミングを行っている人もいれば、プロジェクト管理が主な仕事の人もいる。つまりSEは、実質的にプログラマーやPMなど様々な職種の総称だ。何のことはない。SEは単に技術者の言い換えにすぎないわけだ。

 だからSEは、他の人からは何のプロなのか分からない。それどころか、本人も下手をすると自分のキャリアを見失ってしまう。実際、SEの肩書きをもらった若手が、ITSS(ITスキル標準)を読んでSEに相当する項目が見当たらず、「自分の仕事は何で、どのようにキャリア形成すればよいのか」を悩んだという笑えない話もある。

技術者を本来の職種で処遇すべし

 SEが職種ではなく、単に肩書きにすぎないのなら、とやかく言う必要はない。だが、SEという技術者の呼称はある意味、技術者の在り方の問題点を端的に表している。冒頭の「SEは何のプロか」の問いに即していえば、SEと呼ばれる技術者は何のプロにもなれない場合がある。