これから始まる2015年にITの世界をリードするトレンドを一言で表すと何か──。

 年末年始にはいつも、我々のようなメディアは、新しい年に盛り上がるであろうトレンドで示すキーワードを考える。ユーザー企業のIT部門には、「またバズワード(関心を集めるためのもっともらしい用語)か」とシニカルに捉える人もいるだろうが、実はキーワードを探すことは、これから起こることを認識する上で極めて重要な作業なのだ。

 一つの言葉で、ぼんやりしていたトレンドが認識可能な概念に集約され、多数の人に分かるように“見える化”される。そして結果として、人々の思考や行動のベクトルがそろい、トレンドがさらに大きなうねりとなる。随分前の話だが、その典型例を示そう。1990年代初頭にメインフレームの時代が一気に終わりを告げた時のことだ。

 当時、UNIX/PCサーバーを使って基幹系システムを構築できるとの話が、米国から聞こえてきた。もちろんコンピュータメーカーは「バカげた話」と言下に否定した。ところが、日経コンピュータで米国の先進事例と共に「ダウンサイジング」というキーワードを紹介すると空気が一変。メインフレームからのダウンサイジングはIT部門が取り組むべき課題となり、その後、日本でもオープンシステムが急速に普及することになった。

 やはり言葉には、人を動かし時代を創る力がある。この時は、情報システムにおけるインフラや構築手法が根本から変わったので、“パラダイムシフト(根底からの劇的な変化)”とも呼ばれた。