ソーシャルメディアが現在、これほど注目されている理由の一つは、「ビッグデータ」というビジネスワードにとって重要なピースとなるからです。ソーシャルメディアが一つのメディアとして、マーケティング部門が扱う範囲でとどまるなら、経営層や開発部門の注目度はもっと低くなるでしょう。

 ただしソーシャルメディアと同様に、ビッグデータという言葉の受け取り方は開発部門とマーケティング部門では違ったものになる場合が多いのが実情です。

 オックスフォード大学インターネット研究所のビクター・マイヤー=ショーンベルガー氏と英エコノミスト誌の編集者ケネス・クキエ氏が著した「ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える」(講談社)では“小規模ではなく大きな規模で実行することで、新たな価値をつくるイノベーションを創造するデータの蓄積”がビッグデータであるとしています。

 この定義を読んだとき、マーケティング部門の担当者の多くはソーシャルメディア上に散らばるワードや位置情報/行動履歴を思い浮かべ、その他のデータを思い浮かべることはまれです。一方で開発部門の担当者の多くはテクノロジーの進化によって、データ化されてこなかった環境や社会データ、医療分野での生体データなど広範囲のデータ群を思い浮かべることでしょう。ただし、ソーシャルメディア上のデータは扱いづらさもあるためか、恣意的に優先度が低くなる傾向があります。

 つまりビッグデータを前に、マーケティング部門はソーシャルメディア(=コミュニケーションデータ)を過度に意識し、開発部門は逆に軽んじてしまうという意識の違いがあるのです。

 ビッグデータは今後、企業のあらゆる部門の事業のあり方を大きく変えていくゲームチェンジャーです。その中でソーシャルメディアは不可欠のピースとなります。たとえ扱いづらいデータであっても、SNSにある声や行動のログがなくては、ビッグデータとは言えないものになってしまいます。

 今回はビッグデータとソーシャルメディアの関係と可能性について、ビッグデータを軸にいくつかのキーワードをもって解説します。

非エンジニアでもわかるビッグデータ

 念のためにビッグデータとは何なのかについて簡単に説明します。