周囲がやっているから始めてみたソーシャルメディアの利用について、ほとんどの企業や組織はすぐに同じ課題にぶつかります。

 「これって効果あるの?」――。

 素朴で大切な疑問です。組織がリソースを割くものがなんであれ、なんらかの受益を求めます。社会への貢献を大義とする組織は別として、企業なら人的・資金的なコストに見合った利益をもたらさない活動にリソースをつぎ込むべきではありません。

 本連載では、これまで企業がソーシャルメディアを積極的に取り込む理由について述べてきましたが、その理由を組織内の第三者、特にソーシャルメディアの可能性を信じていない人に納得してもらうには、客観的事実を提示する必要があります。今回はその客観的事実の基となるソーシャルメディアの「効果測定」について、開発部門と対となるマーケティング部門の視点から解説します。

リソース喰いのソーシャルメディア

 マスメディアを使った広告に比べると予算規模の小さいソーシャルメディアでのマーケティングですが、実は高コストな活動です。

 企業として公式にソーシャルメディアの運用をスタートするとなれば、ポリシーの策定や運用方針などを外部のコンサルタントに委託し、さらに日々の情報発信やクレーム対応をアウトソーシングするため、毎月数十から数百万円の予算が必要となります。ちょっとしたキャンペーンを打つ場合、TwitterやFacebook上の広告への出稿も必要でしょう。

 届けられる請求書の額の一つひとつは(マスメディア利用に比較すれば)大きな額ではありません。しかしこれらを累積すると、それなりの大きな金額となります。
さらにそれ以上に企業に大きな負担となるのが人件費です。

 企業の公式アカウントの運用には、自社商品と組織についての知識や、フォロワーである顧客への配慮、社内調整能力やリスク管理といった幅広い能力が必要となります。最善の運用を目指すなら、優秀な社員をソーシャルメディアへの対応に割かなくてはなりません。

 さらにアカウントを安定的に運用し、一人の担当者による属人的なものにしないためには、複数人でチームを組むことが求められます。

 生活者にとってはFree(無料)で、自分の好きなタイミングで利用できる便利なソーシャルメディアは、企業にとってはそれなりの犠牲を払わざるを得ないビジネス活動の一つなのです。

 そこで生まれるのが冒頭の「これって効果あるの?」という問いかけです。