教育・学習用のプログラミングツールとして、小中学校から高校、大学まで、幅広く使われ始めている「Scratch(スクラッチ)」。一例ではあるが、品川区立京陽小学校(関連記事1)や学習院女子高等科(関連記事2)、青山学院大学などで活用されている。神戸親和女子大学もScratchを授業に取り入れた学校の一つである。選択科目である「情報処理演習CⅠ」という秋学期のプログラミングの授業でScratchを活用している。この授業の担当にして書籍『Scratchで学ぶプログラミングとアルゴリズムの基本』の著者である中植 正剛 発達教育学部 児童教育学科 准教授にScratchを使う理由を聞いた。

(聞き手は田島 篤=出版局)

写真1●神戸親和女子大学 発達教育学部 児童教育学科 准教授の中植正剛氏
写真1●神戸親和女子大学 発達教育学部 児童教育学科 准教授の中植正剛氏
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どのようにScratchを活用しているのか。

 本学の学生におけるプログラミング教育の前提からお話ししたい。本学の学生でプログラマや技術者になる者がいないわけではないが、文系女子大の学生たちが将来一線のプログラマとして活躍することは稀である。そのため、本学の授業で技術者としてのプログラマを育成しているという意識はない。

 しかしながら、コンピュータが昔と比較してブラックボックス化している中で、少しでもその動作原理に触れることにより、コンピュータとはどのようなものかを感覚的に感じてくれればと考えている。そのため、「コンピュータというのはどういうものなのか」を学ぶのが授業の目的となる。

 こうした考えに基づき、秋学期の情報処理演習CⅠというプログラミングの授業でScratchを利用している。この授業は選択科目で、さまざまな学科の学生が履修している。

なぜScratchでプログラミングを教えるのか。

 プログラミングおよびアルゴリズムを教える内容に注力したいからだ。

 以前はJavaを使ってプログラミングを教えていた。しかし、90分の授業を15回実施する半年間で、Javaを使いこなしながらある程度までのきちんとしたアルゴリズムを教えるのは困難だった。Javaでは、コンパイルやデバッグの仕方などにも相応の時間を割かねばならず、課題を解くための手順であるアルゴリズムを複数こなす時間が取りにくかった。

 そこで2年ほど前から、より手軽に使えるScratchで教えるようにした。Scratchの場合は、テキストベースの(注:文字をテキストエディタに入力してプログラムを作成する形態の)Javaよりも、ブロックをつなぎ合わせることで簡単にプログラムを作成して実行できる。そのため、プログラミングの楽しさをすぐに体験できる。