教育用プログラミング環境として広く使われている「Scratch」の開発を率いるのが、米MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボ教授のミッチェル・レズニック氏である(関連記事1)。コンピュータを用いた教育および、そのためのツールを追求する同氏に、Scratchの動向や小学校でのプログラミング教育のあり方について聞いた。
インタビューの前編では、8月上旬の「Scratch Conference 2016」で明らかにされた次世代Scratchの動向を中心にお届けする(関連記事2)。
このインタビューは、Scratch Conference 2016の閉会直後にレズニック氏の部屋で行われた。聞き手に加えて、『小学生からはじめるわくわくプログラミング』などの著者でScratchを使ったプログラミング学習の国内における第一人者である阿部和広氏も質問者として、アラン・ケイ氏のもとでプログラミング・システムの研究開発に携わっている大島芳樹氏(所属はY Combinator Research)が通訳として同席した。
今回のイベントにおいて、次世代Scratchとなる「Scratch 3.0」が明らかになりました(注:Scratch 3.0は、タブレット端末やスマホでも使えるようにブロックや文法に工夫が施される予定。公開時期についてレズニック氏率いる開発チームは、「チーム内部向けのプロトタイプは今年中にリリースできる見通し。来年末までには、パブリックテスト用のアルファ版を公開したい」とする)。現在は、Scratch 1.4と同 2.0が併用されていますが、これらの作品はScratch 3.0でも使えるのでしょうか。
Scratch 1.4からScratch 2.0にスムーズに移行できるのと同じように、Scratch 2.0からScratch 3.0にも移行できるようにします。現在のScratchの資産(注:登録ユーザーだけでも1300万人超、プロジェクト=作品数は1635万超。2016年8月末現在の数字)を引き継げるように、Scratch 3.0を開発しています。
Scratch 3.0は、米グーグルによるブロックプログラミング環境「Google Blockly」がベースになるのですね。Google Blocklyをベースに「Scratch Blocks」(注:MITメディアラボのScratch開発チームと米グーグルが共同開発しているブロックプログラミング環境)が開発され、さらにそれをベースにScratch 3.0が開発されるという認識で正しいでしょうか。
はい、そうです。注意してほしいのは、スクリプト(プログラム)の編集画面の基礎技術としてGoogle Blocklyを使いますが、それ以外の部分はScratch 3.0独自の技術が使われることです。ベースとなるのはあくまで編集画面です。