教育・学習用のプログラミングツールとして広く使われ始めている「Scratch(スクラッチ)」。NHK EテレでこのScratchを用いた番組が放送されるなど、さらなる広がりが期待されている。このScratchの日本での伝道師といえるのが青山学院大学客員教授の阿部和広氏だ。10年以上に渡って数えきれないほど開催してきたワークショップを通して、Scratchプログラミングを子供たちに伝えて続けている(関連記事1関連記事2)。その阿部氏に、プログラミング学習を子供たちに伝えるときに心がけていることを聞いた。(聞き手は田島 篤=出版局)


 ワークショップなどにおいて子供たちにプログラミング学習を伝える上で心がけていることを教えてください。

[画像のクリックで拡大表示]

 子供たちは大抵、自分たちでやりたいことを持っています。例えば、ある子供はゲームを作りたかったり、別の子供はお話を作りたかったりというようにです。アニメだったり、音楽だったりもします。それらを自分で作れるんだということを理解してもらってから、実際に作ってもらいます。

 先生がこれを作りなさいというのでその通りに作ったとか、この問題を解きなさいと言われたから答えを出したというようにはしません。そうではなくて、自分の中に持っているやりたいこと、言い換えればアイデアを形にする。そのための手段としてプログラミングを伝えることを重視しています。

 子供たちからやりたいことを引き出すために具体的にはどうしているのですか。

 こちらがどうするというよりもむしろ、干渉しないことが大事だと考えています。もちろん、プログラミングを初めて体験する子供には、ツールの使い方や基本的な考え方など、最低限教えなければいけないことはあります。それを伝えたら、あとはもう子供たちの好きに任せるということです。

 子供たちの中に作りたいものがあるわけですから、あとは自分で形にしていけばいい。こちらは、それをお手伝いする。ファシリテイト(促進する)と呼んでいますけれども、それが大人の役割だと思います。