スマートフォンのアプリで、薬の処方や服用データを管理する「電子お薬手帳」が、注目を集めている。

 通常アプリは無料。ユーザーが処方箋のバーコードを読み込むと、処方された薬剤の情報が自動的に薬局のシステムにアップロードされる。ユーザーも薬局も、好きなときに処方履歴を確認できる。また、飲み忘れ防止のアラーム機能はもちろん、服用した薬の記録をすべてクラウド上に蓄積し、そのデータをもとに服薬状況と残薬の量をグラフで表現する機能などを持つアプリもある。

 お薬手帳とは、医療機関が処方する医薬品の名称や回数などを記録する紙の手帳のこと。調剤薬局や医療機関で、多くの場合、無料で手に入る。薬局で受け取る調剤明細書を張り付けて保存することで、服薬履歴として利用できる。加えて、身長、体重、既往歴、アレルギー歴、副作用歴なども記録できる。

 患者が自身の服用履歴を確認するだけでなく、処方薬の飲み合わせや過剰な摂取をチェックする場合や、診察の際に医師に内容を見せることで、的確なアドバイスを受けやすくなるなどのメリットもある。

 ただし、従来の紙のお薬手帳は、紛失しやすく、薬局へ持参し忘れやすいのに加えて、医師や薬剤師が患者が実際に処方通りに服用しているかどうか、口頭で確認する以外の手段がない、などの欠点があった。電子お薬手帳は、これらを解消するものだ。

 これまでに、調剤薬局ではアイセイ薬局が、全国297店舗で今年10月から電子お薬手帳の運用を始める。薬局以外でも、ソニーとパナソニックが、電子お薬手帳ビジネスに乗り出している。ソニーは、2013年秋から川崎市内で試験運用している「電子お薬手帳サービスharmo(ハルモ)」の運用地域を、2014年7月から隣接する横浜市の一部まで拡大。パナソニックヘルスケアは2014年7月15日、「ヘルスケア手帳」の名称で、電子お薬手帳を運用できるサービスを調剤薬局に向けて発売した。