受注金額を超えた費用が発生して赤字に陥ったシステム開発プロジェクトを指す。日本のシステム開発会社の営業利益率が数%という低い水準にとどまる原因でもある。「一つひとつのプロジェクトが耳かきで集めた利益をスコップでさらうのが不採算案件」とシステム開発ベンダー大手の経営層はこぼす。

 不採算案件はシステム開発の黎明期から今に至るまで発生しているが、大きな原因は要件定義の甘さにある。あいまいな要件で追加開発が発生したり作り直しが発生したりして追加コストが発生する。本来であれば発注者が仕様を明確化して発注し、仕様書以外の追加要件には追加コストを支払うことがスジだ。だがシステム開発ベンダーが発注者の要件定義まで踏み込んできた歴史を持つ日本では、あいまいな要件が発生した責任を受注者側も多分に負担する傾向がある。

 こうした中、不採算案件の撲滅に向け、大手各社は受注前や工程終了ごとの審査を厳しくしている。一定の効果が出てきており、中にはあいまいな仕様による発注を大手が断ったケースも出ているという。

 調査会社IDC Japanによれば、2014年の国内ITサービス市場規模は前年比3.1%増の5兆1893億円。2019年まで年1.6%で成長すると予測する。1000億円以上の大型開発プロジェクトが相次ぐなど堅調に推移する日本市場だが、足元では「祭りのあと」を見据え、顧客やプロジェクトの奪い合い、新技術採用による生産性向上への挑戦も進む。

 そうしたチャレンジは不採算案件につながりやすいが不可欠な取り組みだ。NTTデータの岩本敏男社長は「不採算案件による損失額については、売上高比率で0.3%まで許容する経営を進めている」と話す。