KDDIはここ数年、インキュベーション支援プログラム「KDDI∞Labo」を展開したり、様々なベンチャー企業に出資したりするなど、インターネット関連の事業者を主体とした投資や支援に力を入れている。そのKDDIが10月16日、12のインターネット事業者と共に発表したのが「Syn.」という構想だ。

人気のサービスをサイドメニューでつなぐ

 Syn.構想を簡単に説明すると、“中心のないポータル”になる。ポータルといえば従来、「Yahoo! Japan」に代表されるように、圧倒的なブランド力と集客力を持つサービスを中心に据え、その周辺に付随する様々なサービスの集客につなげるというのが一般的な認識だ。

Syn.構想は、あえてポータルという中心を置かず、人気のサービスをつなぐことで集客や回遊を実現していく
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Syn.構想は、あえてポータルという中心を置かず、人気のサービスをつなぐことで集客や回遊を実現していく

 だがSyn.では、そうした圧倒的なサービスを中心に据えるのではなく、ニュースやファッションなどさまざまな分野で集客している個々のサービスに対し、共通のサイドメニュー「Syn.menu」を持たせることで、各サービスをスムーズに行き来できるようにする仕組みである。一つひとつのサービスは従来のポータルと比べると集客力は強くないものの、それぞれのサービスを利用するユーザーに対し、他のサービスも利用しやすくすることで相互に送客し合うというのが、Syn.構想の狙いといえるだろう。

「Syn.menu」に対応したサービスの一例。サイドメニューに各サービスへのリンクが用意され、ここから他のサービスへとアクセスしやすくなる
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「Syn.menu」に対応したサービスの一例。サイドメニューに各サービスへのリンクが用意され、ここから他のサービスへとアクセスしやすくなる

 Syn.構想に参加している12社は、ファッションや交通、天気やゲームなど、それぞれの分野で人気となっているアプリやサービスを提供している。個々のサービスとして見れば、Yahoo! JapanやLINEなどのように圧倒的な存在感があるわけではないが、各サービスの延べユーザー数は合計で約4100万に達し、束ねると非常に大きな規模となることが分かる。

 そして、このSyn.構想を取り仕切っているのは、もちろんKDDIだ。それゆえ参加しているのも、「音楽ナタリー」「コミックナタリー」などを運営するナターシャや、「nanapi」を運営するnanapiなどのように、同社から出資を受けている、もしくは同社と比較的関係の深い企業が多い。また今回のSyn.の展開に合わせ、新たに「Syn.alliance」を設立。参加する企業のいくつかに合計120億円を出資するなどの取り組みも実施し、関係を強化している。