ここ最近、急速に利用が増えているのが、スマートフォン向けアプリのテレビCMによるプロモーションだ。最近では、これまでの主流だったゲームアプリだけでなく、エンタテインメントや実用系のアプリもテレビCMを放映するようになってきた。なぜこれほど、テレビCMを使ったアプリのプロモーションが増えているのだろうか。その背景について、改めて考えてみた。

モバイルコンテンツの延長線上にあるテレビCM展開

 前回、年末年始のテレビCM展開で注目を集めた「755」について触れた。その期間が終わった今も、ゲームアプリを主体としたスマートフォンアプリのテレビCMを目にする機会は多い。それだけ現在のアプリビジネスの中に、テレビCMが重要なものと位置づけられているともいえるが、なぜこれほどまでにテレビCMによるプロモーションが過熱するようになったのだろうか。

 スマートフォンアプリのテレビCM展開はごく最近のことのように思えるが、フィーチャーフォン時代のモバイルコンテンツの延長線として考えると、その歴史は古い。実際2002年頃から、当時高い売り上げを獲得していた着メロサイトを中心に、テレビCMを使ったプロモーションは積極的に展開されていた。

 さらに2007年頃には、グリーの「GREE」やディー・エヌ・エーの「モバゲータウン」(現Mobage)など、ゲームと連動したSNSサービスがテレビCMによって大きな注目を集めた。その後、両社が提供するソーシャルゲームが人気を博したことで、非常に大きな売り上げを得られるようになった。

 これが一つの成功例となってソーシャルゲームのテレビCMが連日放映されるようになり、モバイルコンテンツ事業者によるテレビCM展開が加速していった。

 スマートフォンアプリ黎明期にテレビCMを積極的に投入して注目を集めたのは、2011年の「LINE」(NHN Japan、現LINE)や2012年の「マジモン」(NHN Japan、現NHN PlayArt)、「パズル&ドラゴンズ」(ガンホー・オンライン・エンターテイメント)などだ。この時期はちょうど、ソーシャルゲームのテレビCMが頻繁に放映されていた時期とも重なっている。プラットフォームこそ違えど、スマートフォンアプリのテレビCM展開は、フィーチャーフォンを含むモバイルコンテンツのテレビCM展開の一環とみることができ、テレビCMの活用に至ったのは自然な流れといえる。

アプリマーケットの飽和がテレビCM展開を加速

 現在では、ゲームやエンタテインメント関連だけでなく、Eコマースやニュースなど多種多様なアプリがテレビCMを展開し、昼夜を問わずテレビCMが流れるほどの活況ぶりとなっている。ゲーム以外のアプリまでもがテレビCMを積極利用するようになったのには、アプリマーケットの現状が大きく影響していると考えられる。