「上司が会社に残っているから、部下も帰宅できない」――日本でもよく言われることが、シリコンバレーでもあることが分かる投稿です。仕事ぶりを労働時間で測ることが時代遅れになっていることは、途中にある見出し「21世紀の仕事を、20世紀の習慣と文化基準で測る」で適切に表現されています。(ITpro)

 あなたのチームがどれくらい一生懸命に働いているかを知ろうとするときに、労働時間や何時に出社し何時に退社するかを測るのは、素人が会社を運営する方法です。労働時間は、彼らがどれだけ効率良く働くかと同じではありません。

 随分前に私の生徒だったラウールから、彼のスタートアップ企業を見せてくれるということで、会社に招待されました。ラウールは素晴らしい会社を創業し、年間売上は5000万ドル(約50億円)、従業員数は数百人にもなり、彼の会社をスタートアップ企業と呼ぶには既に適切ではありません。

 私たちは夕食を一緒にとることになっており、ラウールは私を午後に会社に招き、2~3のスタッフ・ミーティングに出席したり、製品のデモを見たり、会社の家具やカフェテリアを賞賛したり、会社の状況を感じてほしいと望んでいました。

 食事に行く前に、私は企業文化と、スタートアップから企業への移行に関して質問しました。私たちは、彼が新入社員をどのように受け入れトレーニングするか、会社の拡大を管理するために各職種に対して職務解説書を作り、企業全体と各部署の使命と意図を成文化するかに関して話しました(彼はこのアイデアを、私の「使命」と「イノベーション文化」に関するブログから得たと言いました=訳者注:2009年4月9日2015年9月9日の投稿)。

 全てに感銘を受けましたが、それは彼の従業員がどれほど一生懸命働くのかについての話題が持ち上がるまででした。この話題に対する彼の回答は、私が自分の職歴のほとんどにおいて、いかに無知であったかを思い起こさせました。「私のチームは、この会社の就業時間が9時から5時までではないと知っています。私たちは、仕事が終わるまで会社に残ります」。私は少し唖然とし、彼はそれを私が感銘を受けたと受け止め、続けて言いました。「ほとんどの日に、私は7時に仕事を終えますが、従業員はまだ懸命に働いています。彼らは夜遅くまで会社に残り、私たちはしばしば土曜日にスタッフ・ミーティングを開催します」。

 私は縮み上がりました。彼が愚か者だということではなく、私も職歴のほとんどにおいて、彼と同様、何が本当に起こっているか分かっていませんでした。私も自分のチームに対して、無意味な努力を要求していました。

 私たちの夕食は、すぐ近所で7時15分から始める予定だったので、7時にスタッフの人たちに「夕食に行く」といって出かけました。彼のオフィスを離れ、満車の駐車場に入ったとき、私はラウールに、レストランに電話して遅れると言ってほしいと頼みました。私は「会社の駐車場の向かい側で、会社の出入口をしばらく見てみましょう。私の職歴であまりにも遅く、痛烈に学んだことを、あなたに見せたいのです」。

 彼は私のことをよく知っているので、辛抱強くそこに立っていました。7時5分過ぎには、何も起こりませんでした。「何が見られるのですか?」と彼はたずねました。「もう少し待って下さい」と私は言い、私が正しいことを願いました。7時10分になっても、出入口には何も起こりませんでした。

 その時、彼はイライラして「夕食に行こう」と言おうとしたちょうどそのとき、出入口が開き、最初の数人が帰宅しました。私は彼に「彼らは会社の副社長か上層幹部ですか?」と聞くと、彼はうなずき、驚いたように見続けました。さらに10分ほど待った後、蟻が巣を空にするように建物から従業員がぞろぞろと出てきました。ラウールは唖然と顔を引き締めました。30分以内に駐車場は空になりました。

 レストランに着くまで、会話はほとんどありませんでした。2~3杯飲んだ後、「いったい何が起こったのですか?」と、彼はたずねました。