今回は、前回に続いて「米国海軍のイノベーション」がテーマです。ブランク氏は、空母に乗った体験に基づいて、海軍に必要なイノベーションを提案しています。(ITpro)

 今回のブログは、私が、空母「USS Carl Vinson」に乗艦した体験記の後編です。前編では、私が乗艦したときに見たり学んだりしたこと、空母の構造、航空部隊がどのように機能するか、空母が周辺の他艦隊(空母打撃群)とどのように機能するのかについて説明しました。しかし、最も大切な学びは、民間企業だけでなく、海軍にも破壊的な革新が起こっていることでした。加えて、私たちが破壊に陥ることを回避したい大企業が、継続的にイノベーションを創り出すために構築した「リーン・イノベーション」のツールが、海軍でも通用することでした。

 今回のブログでは、私が見たことについて2~3日考えた結果を提案します。

防御体制の整ったターゲット

 次の供述は両方とも正しいのです。

・空母は、これから30年間存続します
・空母は時代遅れです

 空母は、110億ドル(1兆1000億円)をかけて構築された、5000人を収容するポータブル空軍基地です。世界中のどこにでも、44機のF/A-18攻撃戦闘機を配備できると考えて下さい。

 空母の航空部隊の中核を成す、44機のF/A-18攻撃戦闘機の主な任務は、空域制御と敵のターゲットを爆撃することです。無競争空域のターゲット(イラン、アフガニスタン、シリア、ソマリア、イエーメン、リビアなど)については、それは容易です。

 問題は、世界の一等国については、手強い地対空ミサイルを開発していることです。ロシアはS-300とS-400、中国はHQ-9を保有しており、それらは航空機を撃ち落とすのには極めて有効です。加えて両国は、これらのミサイル・システムを他の国(イラン、シリア、エジプトなど)に売っています。一方、空母のEA-18G Growlers機の任務は、これらのミサイルのレーダーを妨害して混乱させることですが、彼らの地対空ミサイルの精巧性と射的距離は、EA-18G Growlers機のレーダーの妨害対策よりも、高速に進歩しています(加えて、レーダーを停止させるサイバー・ハックがあります)。

 これが意味するのは、これらの近代的な地対空ミサイルで防衛されているターゲットに対して、空母のF/A-18攻撃戦闘機が到達できる確率が、年々低減していることです。米軍がこれらの防空システムを、ドローンや巡航ミサイル、サイバー攻撃で取り除かない限り、勇敢で熟練したパイロットだけでは十分でないかもしれません。ドローンと違って、F/A-18攻撃戦闘機は有人機なので、多数のパイロットを失うことは政治的に容認されないかもしれません。